決算解説ブログ IROG

決算資料をもとに様々な企業・業界の分析をしていきます

【決算解説】幻冬舎と共同でファッションマガジンを創刊「クルーズ」

f:id:sdaisuke:20181218041358j:plain

今回は、ファッション通販サイトSHOPLISTを提供している「クルーズ」です。ファストファッション領域に特化したECサイトとしてブランド化すべく、事業を拡大しています。

まとめ

  • SHOPLIST事業の上期の売上は125億2,900万円で、前期比+23.8%と大きく成長
  • 現在の年間ユニーク購入者数は約182万人で、目標とする500万人への進捗率は36.4%
  • 幻冬舎と共同で通販直結型のファッションマガジン「LiSTA」を創刊するなど、積極的にプロモーションへ投資
  • 今後の課題は、売上90%以上を構成するすべての商品を3日以内に配送する物流体制の構築


事業概要

クルーズは、ファッション通販サイト「SHOPLIST」を主力に、ゲームやオンライントラベルなど様々な事業を展開しています。2018年5月10日をもって、それぞれの事業を子会社化し、グループ経営へと移行しました。

今回は、子会社の1つであるCROOZ SHOPLIST株式会社の事業を中心に見ていきます。「SHOPLIST」は、ファストファッション領域に特化したECサイトです。FOREVER 21やWEGOなどのブランドをはじめ、様々な低価格商品が取り揃えられています。

 

19/03 上期の業績

SHOPLIST事業と新規事業が成長を牽引しているCROOZグループ

まずは連結業績です。

f:id:sdaisuke:20181209134521p:plain

18期上期の取扱高は156億9,300万円、売上高は150億5,700万円で、どちらも前期比+30%ほどの増加をしています。

上記の成長を牽引しているのはSHOPLIST事業と新規事業です。今回は新規事業については触れませんが、クルーズはオンライントラベル事業やVC事業に参入したり、積極的にM&Aを行うなど、多数の事業を成長させています。

 

積極的なプロモーションにより、順調に拡大しているSHOPLIST事業

続いて、SHOPLIST事業を見ていきます。

f:id:sdaisuke:20181209140411p:plain

SHOPLIST事業では、中長期的な目標として「年間ユニーク購入者数 500万人」と「1人当たり年間購入金額 20,000円」を掲げています。前回の「ロコンド」の記事にも記載しましたが、これらは取扱高を形成している主要な指標です。

取扱高 = アクティブユーザー数(会員数 × アクティブ率) × ARPU


年間ユニーク購入者数は、ターゲットゾーンである15~44歳の人口4,200万人のうちの12%にあたり、十分狙える範囲だそうです。1人当たり年間購入金額は、SHOPLISTユーザーの1回あたりの平均購入金額が5,000円のため、それを年4回、つまり各季節ごとに購入すると想定して計算しています。

f:id:sdaisuke:20181209140904p:plain

現在の年間ユニーク購入者数は約182万人で、目標とする500万人への進捗率は36.4%となっています。

f:id:sdaisuke:20181209140949p:plain

今期は上期だけで+21.7万人となっており、過去を上回るペースで増加しています。

f:id:sdaisuke:20181209140926p:plain

一人当たり年間購入金額は13,369円で、平均購入回数は2.71回となっています。ここ数年、大きな変化はなさそうです。

f:id:sdaisuke:20181209141055p:plain

今後は、上記の目標を達成するために、「全SHOPLISTユーザーのリピート率向上」に注力するとのこと。そのために、まずは「配送日数の短縮」と「キャンセル・返品に関する問い合わせ件数の削減」に取り組むそうです。

事業の売上・営業利益も見ていきます。

f:id:sdaisuke:20181209141122p:plain

上期の売上は125億2,900万円で、前期比+23.8%と大きく成長しています。

f:id:sdaisuke:20181209141136p:plain

四半期の売上は、1Qが63億4,300万円、2Qが61億8,600万円です。1Qは過去最高の売上であり、順調に事業が拡大していることがわかります。

f:id:sdaisuke:20181209141151p:plain

また、上期の営業利益は4億5,500万円となっています。

f:id:sdaisuke:20181209141208p:plain

四半期の営業利益は、1Qが1億9,800万円で、2Qが2億5,700万円です。

クルーズは連結取扱高1,000億円を達成するために、グループで出た利益を売上最大化に投資し、利益を出さない方針を軸にしています。そのため、上期に営業利益が発生した分、下期は積極的に投資を実施していくとのことです。

最後に販管費です。

f:id:sdaisuke:20181209141239p:plain

物流費は、1Qが8億6,000万円、2Qが9億400万円で、売上対比率は前期比で2~3%上昇しています。これは配送料の値上げの影響によるものです。

プロモーション費は、1Qが10億6,200万円、2Qが7億8,800万円で、売上対比率は前期とほぼ同水準となっています。Facebook、Instagram、TwitterなどのSNSをはじめ、テレビCMや雑誌など積極的にプロモーションに投資しています。

f:id:sdaisuke:20181209141319j:plain

今年の3月には、幻冬舎と共同で通販直結型のファッションマガジン「LiSTA」を創刊。「なりたい自分が見つかる」というコンセプトのもと、20~30代の女性をターゲットに、トレンドのアイテムやコーディネートなどの様々な情報を発信しています。

トレンドファッションマガジン | LiSTA(リスタ)

 

今後の方針

「SHOPLISTをファストファッションEC分野を代表するブランドへ」

クルーズは、SHOPLISTをファストファッション領域を代表するECサイトへと成長させようとしています。そのために、まずは下記の2つの課題に注力するようです。

  • 売上90%以上を構成するすべての商品を3日以内に配送できるよう、物流体制を改善していく
  • ファストファッションに関するブランド数・アイテム数の圧倒的No.1を目指す


ファストファッションは、多くの消費者にとって馴染みがあり、様々な企業が狙うレッドオーシャンです。そうした状況の中、クルーズがどのように戦っていくのか、今後の動向が気になります。

引用:
クルーズ 2019年3月期 第2四半期 決算説明資料