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【決算解説】通販カタログの部数削減の影響で売上が不振「千趣会」

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今回は、通販カタログ・通信販売サービス『ベルメゾンネット』を提供している「千趣会」の2018年度第2四半期の決算解説です。

まとめ

  • 今期の売上高は前年同期比9.5%減の1190億円、営業利益は8.8%減の113億8,000万円で減収減益
  • カタログの部数・頁数の削減等による影響で、通販事業の売上高が大きく減少
  • 半期購入者数は前年同期比から39.8万人減少し、一人当たりの受注単価・注文回数も低下
  • ブライダル事業は、施行件数と顧客単価の増加により、売上高が前年同期比8.3%増の88億8,000万円と好調


事業概要

千趣会は、”ウーマン スマイル カンパニー”を企業ビジョンとし、女性の毎日に笑顔を届けられるよう様々な事業を展開しています。

通信販売事業
千趣会の売上の7割を占めるメイン事業。衣料品や雑貨、美容品など様々な商品を取り扱う総合通販「ベルメゾンネット」をはじめ、花の通販「イイハナ・ドットコム」やレディースファッション通販「モバコレ」などのサービスを提供しています。

ブライダル事業

全国でゲストハウスの式場を23店舗運営しています。ゲストハウスとは、ヨーロッパの邸宅や海外ドラマに出てくる会場のような華やかなウェディング施設となっています。

法人事業

長年培ってきた通信販売事業のノウハウをいかし、商品開発や物流、カスタマーサポートといった一連のサービスに関するコンサルティングを法人向けに提供しています。

その他事業

上記に加え、2013年には保育園事業に進出するほか、ベルメゾン会員向けのカード・保険サービスなども手掛けています。
 

19/12期 第2四半期の業績・収益構造(P/L)

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今期の売上高は前年同期比9.5%減の1190億円、営業利益は8.8%減の113億8,000万円で減収減益となっています。基幹サービスであるベルメゾンネットの売上不振やバーゲンセールの影響が響いているようです。

カタログの部数削減により売上不振の通信事業

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続いて、セグメント別に見ていきます。通販事業の売上高は前年同期比14.1%減の447億7,900万円、営業利益は162億6,000万円の赤字となっています。
 
別記事でも紹介しましたが、通販(EC)事業の売上の構成要素は下記になります。

売上高 = (アクティブユーザー数 × ARPU) × テイクレート

 
今回は、半期購入者数が前年同期比から-39.8万人と大きく減少し、一人当たりの受注単価・注文回数も下がっているため、ダブルパンチです。
 
これらが下がった要因はカタログ部数・頁数の削減にあるようです。当初から部数を減らすことは計画していましたが、機会損失により想定以上に減少したとのこと。

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商品ジャンル別の売上高では、食品を除いた全ジャンルが二桁%の減少となっています。衣料品はアウターの型数削減が影響しており、インテリアは家具・収納・ファブリック関連が不振のようです。

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最終的には、カタログの部数・頁数の削減や人員の減少、コスト見直しによる販管費の押し下げにより、営業利益は前年同期とほぼ変わらない数字となっています。

市場が縮小する中、好調なブライダル事業

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ブライダル事業は、売上高が前年同期比8.3%増の88億8,000万円、営業利益が138%増の3億1,200万円と好調のようです。店舗の数自体は前年と変わりないですが、施行件数と平均組単価が共に増加しています。

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東京ブライダル専門学校の情報によると、ゲストハウス・ウェディングは2003年頃から急激にシェアを伸ばすも、ここ数年は約20%に留まっているようです。

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一方、挙式にかける費用な年々増加傾向にあり、2017年の全国平均額は354.7万円となっています。国内のブライダル市場が縮小して行く中で、今後も引き続き成長していくのか気になるところです。


業務受託の増加により売上拡大している法人事業

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法人事業は、売上高が前年度比8.5%増の24億6,300万円、営業利益が26.1%減の1億6,400万円で増収減益となっています。物流・コールセンターの受託等により売上が拡大していますが、なぜ営業利益が減少しているのかは不明です。

 

19/12期 第2四半期の資本価値(B/S)・お金の流れ(CF)

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続いて、貸借対照表です。資産の合計は815億4,900万円、負債は413億7,400万円、資本(純資産)は401億7,500万円となっています。
 
現金及び預金は134億400万円で、資産全体の16.4%を占めています。

資本の内訳は、資本金及び資本剰余金が460億9,200万円、利益剰余金が11億3,500万円で、株主資本が中心の構成です。

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キャッシュフロー(CF)は、営業CFが33億2,200万円のマイナス。これは仕入債務と未払金の減少によるものです。また、財務CFは自己株式の買い戻しとレビックの出資の結果、4億9,300万円のマイナスとなっています。現金残高は134億円です。

 

19/12期の通期計画

上期の売上不振を踏まえ、通期計画を下方修正

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最後に通期業績予想です。当初の計画から下方修正しており、売上高は1190億円、営業利益は3億円となっています。

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修正の要因は、上記で述べたように、カタログ部数の削減による機会損失や在庫処分のためのバーゲンセールが挙げられています。
下期の対策としては、看板商品や不振であった家具の販促や外部モールの出店を強化していくようです。
 

年々売上が減少している通販事業。今期はカタログ部数・頁数の削減による影響が大きく現れました。売上が見込める販促手段である一方で、コストパフォーマンスが悪くなっているカタログ、今後しっかりと対策をしていけるのでしょうか?

引用:
株式会社千趣会 2018年度 第2四半期決算説明会

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