決算解説ブログ IROG

決算資料をもとに様々な企業・業界の分析をしていきます

【決算解説】CM効果によりアクティブ会員数が順調に増加!「ロコンド」

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前回の「ZOZO」に引き続き、アパレルEC企業の決算資料を見ていきます。今回は、靴とファッションの通販サービスを提供している「ロコンド」です。

まとめ

  •  2018年上期の売上高は28億円で、2017年上期の18億円から62%の拡大
  • テレビCMとWeb広告の強化により、広告関連費用が前年同期比12.1%の増加
  • 「LOCONDO.jp」のアクティブユーザー数が39万人と順調に増加し、上記による認知度向上の効果が現れている

  • 物流受託サービスである「e-3PL」が、出荷個数ベースで前年同期比525%の急激な成長

  • ”在庫シェアリング”を軸とした統合的なビジネスモデルが独自の価値として確立しつつある


事業概要

ロコンドは、靴をメインとしたファッション通販サイト「LOCONDO.jp」を主力に、アパレル企業向けのシステム提供や自社ブランドの運営など様々な展開をしています。

EC事業

アパレルECサイト「LOCONDO.jp」を主力とするロコンドの基幹事業
・LOCONDO.jp:試着できる靴とファッションの通販サイト
・LOCOMALL:楽天、Yahoo!内における公式ストア

プラットフォーム事業

オンライン販売を強化したいアパレル企業向けに、ECサイトの受託や物流などのサービスを提供するB2B事業
・BOEM:ECサイトの立ち上げや運営等の完全受託サービス
・e-3PL:ECとリアル店舗の両方の倉庫機能を受託するサービス
・LOCOCHOC:店舗で欠品が発生した際、ECサイトの在庫から直接顧客に発送するフォローサービス
・LOCOPOS:リアル店舗向けのクラウドPOSサービス
・LOCOPAY:QRコードによる決済サービス

 

ブランド事業

EC事業・プラットフォーム事業のサービスを活用した自社運営のブランド
・MANGO:スペイン発のグローバルファッションブランド(国内における販売独占契約)
・Misuzu & Co:婦人靴の卸企業(三鈴商事を子会社化)

投資事業

株式取得を通じた上記の事業の拡大や、EXITによる投資リターンを目的とした事業
・Corporate Principal Investment(CPI):20%以上の株式を取得し、経営に関与し、上記の事業による価値向上を目指す
・Corporate Venture Capital(CVC):20%未満の株式を取得・提携し、経営に関与せず、上記の事業による価値向上を目指す

 

19/02 第2四半期の業績

前回の「ZOZO」と同様のECビジネスのため、今回も下記の方程式が重要となります。

ネット売上 = 取扱高 × テイクレート

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2018年上期の取扱高は62億円で、2017年上期の46億円から36%増加しました。また、売上高は28億円で、前年比で+62%を記録しています。

上記の数値をもとにテイクレートを算出すると、45.2%と非常に高い数値となりますが、これはロコンドのビジネスモデルゆえなのでしょうか…?

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上期の販管費は27億4,500万円で、前年比13.6%の増加となります。その大半を占めるのが広告関連費用の11億円で、前年比12.1%の増加となっています。これは2018年3月より開始したテレビCMの放映と、それに連動したWeb広告の強化への投資です。

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そのため、広告費用前営業利益は6.8億円で前年比+113%を記録するも、上期の営業損益は4.2億円の赤字となっています。また、CPI事業にて、L Capital TOKYOの株式を売却したため、純損益は0.7億円で黒字を確保しています。

L Capital TOKYOは、ロコンドと免税店大手のラオックスが共同で設立したファンドです。株式はラオックスが60%、ロコンドが40%で共同保有していましたが、リーダーシップを明確化するために、ロコンドが30%分を売却したようです。

ロコンド田中社長が奇手、ラオックスと共同でファンド設立 売上高706億円のシャディを買収│WWD JAPAN

 

CM効果により「LOCONDO.jp」のアクティブ会員数が順調に増加

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主力サービスである「LOCONDO.jp」は、今期の取扱高(返品差引後)が21億4,800万円となり、成長率は+65%を記録しています。

基本的に、取扱高は下記の要素で形成されています。

取扱高 = アクティブユーザー数(会員数 × アクティブ率) × ARPU 

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アクティブユーザー数は、テレビCMによる認知度向上により大幅に増加し、39万人となりました。

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ユーザー一人あたりの年間購入金額であるARPUは、新規ユーザーが増加したものの、わずかな減少に留まっています。よって、取扱高が大きく拡大し、テレビCM及びWeb広告の効果が確実に現れていることがわかります。

 

物流受託サービスである「e-3PL」が、出荷個数ベースで前年同期比525%の急激な成長

今期、急激に成長したのが物流受託サービスである「e-3PL」です。

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出荷個数ベースで前年同期比+525%を記録しています。これは下記の2点が要因だそうです。

  • ロコンドWMSを継続的に改修し、店舗出荷に対する様々なニーズに対応可能となったことによる新規者数の増加
  • 業務提携パートナーであるラオックス・グループのモード・エ・ジャコモ社やオギツ社の物流受託の本格的な始動


ロコンドは、「物流 × ITインフラ」を中長期的な競争力の源泉と位置付けているため、これらのサービスがどれだけ成長し、その他の事業に好影響をもたらすか、要注目です。

 

中期計画

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中期計画では、2018年度に150億円、2020年度に300億円の取扱高(返品差引後)を目標としています。現在の取扱高(返品差引後)は62億円で、進捗率は41%です。テレビCMの効果が継続すれば、今年度の目標は達成可能と思われます。

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営業利益に関しては、今年度は10億円の赤字、2019年度に黒字化し、2020年度に30億円に達するという目標を掲げています。

 

ZOZOに対するロコンドの強み・弱み

最後に、決算説明会のQ&Aで「ZOZOTOWNに対するロコンドの強み・弱みは何か?」という質疑応答があったので、ご紹介します。

強み

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靴業界の課題である”在庫の回転率向上”と”余剰在庫の解消”の解決策となる、e-3PLを軸とした「在庫シェアリング」の実現

弱み
洋服の品揃えとWEARのようなコーディネート・コンテンツ

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靴のECだけでも取扱高1,000億円までのアップサイドが存在します。
そのため、”試着”や”返品無料”などによるユーザーへの手厚いサービスに加え、アパレル企業向けに”在庫シェアリング”を軸とした統合的なサービスを提供することで、その地位を確実に狙う。さらに、靴以外のカテゴリーも充実させていくことで、アパレルECのトップであるZOZOを追随していく形になると思います。

一方、ZOZOはプライベートブランド「ZOZO」に本腰を入れており、10月末には”ZOZOSHOES”の商標登録を出願しています。

ZOZOが「ZOZOSHOES」の商標出願、オーダーシューズの開発は大詰めへ

アパレルECの各社に思惑があり、異なるアプローチを取っているため、とても面白い構図となっています。今後の展開に目が離せません。

引用:
ロコンド 2019年2月期 第2四半期 決算説明会資料
ロコンド 決算説明会 Q&A集