決算解説ブログ IROG

決算資料をもとに様々な企業・業界の分析をしていきます

【決算解説】新技術の採用でZOZOSUITに新展開!?「ZOZO」

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企業の決算資料を読む上で参考になる本が、柴田さんの著書『決算資料からビジネスの仕組みが見えてくる』です。今回は、本書でECビジネスの事例として取り上げられている「ZOZO」の決算資料を見ていきます。

まとめ

  • 今期の売上高は272億1,200万円、前年同期比28.1%の増加
  • PB事業の広告費とZOZOSUITの大量配布により、販管費が前年同期比50%以上の増加
  • PB事業は売上拡大するも、生産工程の不具合により納期が遅延
  • 広告事業の売上高が1億9,100万円と、前期の4倍以上の成長
  • 新技術によりZOZOSUITが不要となり、配布計画も大幅に変更


事業概要

ZOZOは、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を主力に、ファッションに関する様々なサービスを展開しています。

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN

ZOZOTOWNは、ファッションを中心とした日本最大級のインターネットショッピングサイトです。1,100以上のショップ、約7,000ものブランドを取り扱っています(2018年12月現在)。

事業としては、上記のオンラインショップの運営管理を受託する「受託ショップ」のほか、ブランドメーカーより在庫を買い取り販売する「買取ショップ」、ユーザー等から買い取った中古ファッション商材を販売する「ZOZOUSED」を手掛けています。

 

ファッションコーディネートアプリ「WEAR

WEARは、日本最大級のファッションコーディネートアプリです。自身のコーディネートを投稿したり、他のユーザーの投稿を検索・閲覧することができます。ZOZOTOWNと連携しているため、気に入ったアイテムをそのまま購入可能です。

また、クライアント企業に対して広告枠を提供しており、広告収入を得るモデルを採用しています。

 

プライベートブランド「ZOZO

ZOZOは、自社開発の体型計測デバイス「ZOZOSUIT」で計測したデータをもとに製造・販売しているプライベートブランドです。一人ひとりのサイズに最適化したパーソナライズな商品となっており、Tシャツやデニムパンツなどオーソドックスなアイテムから展開しています。

 

19/03 第2四半期の業績

『決算資料からビジネスの仕組みが見えてくる』でも述べられているように、ECビジネスで押さえておきたい方程式は下記になります。

ネット売上 = 取扱高 × テイクレート

各要素を順番に見ていきましょう。

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商品取扱高は708億1400万円で、前年同期比17.9%と順調に拡大しました。

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売上高は272億1200万円で、前年同期比28.1%の大幅な増加です。

上記の数値をもとに算出すると、テイクレートは38.4%となります。一般的なテイクレートは7.0~8.5%のため、非常に高い数値です。それだけ出店者にとっても魅力的な場になっているということでしょう。

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一方、営業利益は41億7,800万円で、前年同期比-28.6%と大きく減少しています。減益の要因は、売上の伸びに対して販管費の増加が大きいためです。

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今期の販管費は205億5,900万円で、前年同期比50.2%と大幅に増加しています。決算説明会資料によると、主な要因は下記のようです。

  • 荷造運賃の増加(配送運賃の変更、ZOZOSUITの大量配布)
  • 広告宣伝費の増加(PB事業の広告費、ZOZOSUITの大量配布)
  • 人件費の増加

下記でも触れるように、新技術の採用によりZOZOSUITの配布計画も変更となるため、今後販管費にも大きな変化がありそうです。

 

PB事業は売上拡大するも、生産工程の不具合により納期が遅延

ZOZOは複数の事業を手掛けていますが、その中でも体型計測デバイス「ZOZOSUIT」を活用したプライベートブランド事業が大きく成長しています。今期の売上高は5億4,500万円で、前期の1億1,300万円から5倍近く増加しています。

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しかし、実際は15.4億円もの注文実績があったようです。

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生産工程の一部に不具合が発生し、ビジネススーツ等の納期が遅延したことが原因となります。この問題は既に解決しており、年内には発送できるそうです。

 

ユーザー基盤を活用した広告事業が本格的にスタート

テストと開発の期間を長く取っていた広告事業も、本格的にスタートしたようです。売上高が前期の4,500万円から、今期は1億9,100万円と4倍以上の成長を見せています。

通期計画の目標は30億円ですが、DACとの提携もあるため、計画に変更はありません。DACはデジタルマーケティングにおける広告を起点とした様々なサービスを提供している企業で、ZOZOTOWNやWEAR(下図)の広告商品を開発していきます。
DAC、ZOZOテクノロジーズと戦略的パートナーシップを締結 | インターネット広告 DAC

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今後の展開

新技術によりZOZOSUITが不要となり、配布計画も大幅に変更

先進的なテクノロジーの活用や特徴的な見た目により大きな話題となったZOZOSUITですが、新展開を迎えるようです。

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これまでプライベートブランド「ZOZO」の商品を購入するためには、ZOZOSUITを着用・撮影し、身体データを計測する必要がありました。しかし、新技術の採用により、これらが全て不要となります。

決算説明会のQ&Aによれば、機械学習のための教師データが一定量集まったため、ユーザーが入力する基礎データと併せて利用することで、体型データの精密な予測が出来るようになったとのことです。

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その結果、ZOZOSUITの配布量も最大300万枚となり、コストが30億円減少するようです。

主力のZOZOTOWN事業が順調に拡大する中、大きな成長を見せているPB事業と広告事業。今後どのような展開となるのか、非常に気になります。

今回が初めての分析記事となりましたが、損益計算書以外の財務諸表や株価に触れたり、グラフの表記の仕方を改善していくなど、コンテンツを徐々に充実させていきたいと思います。

引用:
ZOZO 平成31年3月期第2四半期 決算説明会資料
ZOZO 決算説明会補足資料